ここでは、ビジネスプロセスとはどのようなものか、再確認しておきましょう。
1.2.1 日常的に存在するビジネスプロセス
「ビジネスプロセス」とは、業務の手順と進捗のこと。そして、「ビジネスプロセス管理」(BPM:
Business Process Management)とは、業務の手順と進捗を管理することです。わざわざ「ビジネス
プロセス」という言葉を使うと、ずいぶん難しく感じるかも知れません。しかし、業務の手順と進捗の
管理は、すべての業務に日常的に存在しています。登場する用語や概念も、ごく当たり前のものばかり
で、決して難しくありません。
しかし、抽象的な用語定義だけでは、理解が容易ではありません。そこで次のように、どこの企業にも
ある 3 つの部門を例にとり、ビジネスプロセスの具体的なイメージをつかんでみましょう。
- 営業部門:
多くのビジネスは、お客様に、製品やサービスなどを何らかの形で販売しています。そのため、企業には、お客様への営業(販売)といった業務が存在しています。
- IT部門:
現在では多くの業務が IT システムやパソコン上で行われており、IT 部門によるシステム運用管理(IT サービス管理)といった業務が重要性を増しています。
- 管理部門:
多くの人たちが協力して業務を進めるためには、従業員が働くための環境を整えたり、経費精算や各種の人事申請をしたりといった総務・人事・経理などの管理部門の業務も不可欠です。
このような部門であれば、どのような組織であれ、何らかの形で存在しています。では、このような
「営業部門」「IT 部門」「管理部門」の業務の中から、ビジネスプロセスを探してみましょう。
なお、この他に様々なビジネスプロセスの具体例を、BIZ PLATFORM の製品情報サイトの
業務別解決ストーリー(https://www.biz-platform.com/test_case/)で紹介しています。もっと自社
の業務にあった具体例を見つけたいという人は、そちらもご覧ください。
1.2.2 営業部門の商談プロセス
営業部門の活動は、その営業スタイルに合わせてお客様からの引き合い(商談)に対応していきます。そ
れぞれの営業スタイルは、企業の業種や業態によって異なりますが、お客様からの引き合いに対応して
いくという点では共通しています。たとえば、特定のお客様のところを回って、くり返し注文をとって
くるルート営業というスタイルもありますし、新規のお客様を常に開拓する営業スタイルもあります。
ルート営業であれば、図のように、お得意様をくり返し訪問して、商談があれば、「見積書を発行」⇒
「価格や条件・数量などの調整」⇒「受注」⇒「納品」⇒「請求」と進んでいきます。商談の案件ごと
に、進捗スピードが違ったり、この手順を行ったり来たりすることもあります。ここでは、説明をわか
りやすくするために単純化していますが、おおむねこのような一定の流れにそって進んでいきます。
営業部門のマネージャは、このような営業案件が滞りなく進行し、できるだけ良い条件で販売できるよ
うに、全体の状況をモニタリングしています。
1.2.3 IT 部門の IT サービス管理プロセス
次に、IT 部門のビジネスプロセスの具体例を見てみましょう。
IT 部門の活動は、コンピュータやネットワーク機器・アプリケーションソフトウェアなどの操作や管
理も不可欠ですが、社内のエンドユーザーからの問い合わせに対応したり、外部の協力会社と連携した
りする部分もたくさんあります。IT 部門の役割は、IT を利用したサービスを社内外の利用者に提供す
ることにあります。コンピュータやネットワーク機器の管理や問い合わせ対応などは、このような IT
サービスの一部と考えることができます。
IT サービスは、いくつかの業務の状態にそって進んでいきます。たとえば、社内部門から、ノート PC
が動かないので調べてほしいというリクエストがあれば、「受付」(一次対応)⇒「調査」(二次対応)と
進み、もしもノート PC が故障していれば「入れ替え」や故障機の「修理依頼」といった作業が必要に
なります。IT サービスでは、このようなリクエストを「案件」(インシデント)という単位で管理しま
す。
案件ごとに、進捗スピードが違ったり、この手順を行ったり来たりすることもあります。また、この例
では話をわかりやすくするために、少し単純化していますが、おおむねこのような一定の流れにそって
進んでいきます。
IT 部門のマネージャは、このような案件が滞りなく進行し、社内の業務を高度化するように、全体の
状況をモニタリングしています。
1.2.4 管理部門の申請処理プロセス
今度は、総務・人事・経理といった管理部門が行うビジネスプロセスの具体例を見てみましょう。
企業には、多くの人たちが協力して業務を進めるために、従業員の働く環境を整えたり、経費精算や各
種の人事申請を行ったりといった管理業務があります。管理部門では、一般の従業員からの申請や問い
合わせに対応して、業務を進めていきます。たとえば、引越しや結婚などで住所・氏名などの個人情報
に変更があれば、「個人情報の変更申請」⇒「受付」⇒「関連システムのデータ変更」といった流れに
そって業務を進めます。複数のシステムや台帳・担当者をまたがって情報を変更する場合もあるでしょ
う。
申請ごとに、進捗スピードが違ったり、この手順を行ったり来たりすることもありますし、話をわかり
やすくするために、少し単純化していますが、おおむねこのような一定の流れにそって進んでいきま
す。
管理部門のマネージャは、このような申請の対応が滞りなく進行し、社内のビジネス活動が効率化・高
度化するように、全体の状況をモニタリングしています。
1.2.5 ビジネスプロセスの共通要素
ビジネスプロセスの具体例を 3 つ紹介しました。それぞれ業務は異なりますが、共通の要素により構成
されていることに気付いたでしょうか。
そうです、どの業務も「案件」がありました。営業部門の商談プロセスでは「商談」、IT 部門の IT サ
ービス管理では「インシデント」、管理部門では「申請」や「作業依頼」というように、それぞれ違う
名前で呼んでいますが、個々の業務の依頼事項という意味では共通です。
そして、この案件は、ほぼ「共通の流れ」にそって進んでいきました。進捗スピードが違ったり、この
流れの上を行ったり来たりすることもありますが、ほぼ共通した流れにそって進んでいくという点では
同じです。また、この説明では、それぞれの業務の進行に合わせて、業務の「状態」がありました。
さらに、業務マネージャは、その手順にそった案件の状態を把握することで、業務を滞りなく進行させ
るようにしていました。
- 業務の「案件」:個々の業務依頼(商談、インシデント、申請など)
- 業務の「手順」(プロセス) :業務を進める共通の流れ
- 案件の「状態」(ステータス):案件ごとの業務の状況(受付中、作業中、承認待ち、完了など)
- 業務の「進捗把握」(モニタリング):案件ごとの状況を把握し、案件の進行や業務負荷を調整するビジネスプロセス管理は、このような共通の要素に注目して、業務の手順と進捗を管理します。